2020年、東京オリンピックの開催が決定しましたね!世界中の注目を集めるスポーツのイベントとしては2002年のワールドカップ、そして2020年のオリンピックの興奮を生きているうちに間近で体験出来る事は非常にうれしく思います。あと7年ですのでこれからオリンピックに向けた準備が各業界で進み、日本の経済も良い方向に向かうことを期待しております。

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と、東京オリンピックの開催決定自体はすごく嬉しく、わくわくしている自分もいるのですが、何か心の中で引っ掛かっている部分があります。それは、2020年の東京オリンピックのメインスタジアムとしても利用される「新国立競技場」の建設の為に、現国立競技場が取り壊されてしまうことです。この現国立競技場もまた1964年の東京オリンピックのメインスタジアムとして建設され、多くのドラマと感動も生んだ場所です。あれから約50年あまり、高度経済成長のシンボルとなった東京タワーと同じく国立競技場も役目を終え新しい姿になってしまいます。東京タワーはスカイツリーに役目は奪われてしまいましたが、現在も建ち続けスカイツリーよりも美しいと感じる人はたくさんいるのではないでしょうか?しかし、国立競技場は完全に取り壊され新しい姿になってしまうので、そこでの思い出も記憶もすべて一新されてしまうような気がしてなりません。

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自分は小学校の時からサッカーを始め、高校卒業まで部活動でプレーをしていました。プレーだけでなく観るのも好きで、特にお正月に行われる全国高校サッカー選手権は毎年楽しみに観ています。現在はJリーグになっていますが、その前身の日本サッカーリーグは今のように多くのサポーターが観戦するようなものではなく、ガラガラのスタンドでカップラーメンを食べながら観戦していたのを思い出しますが、高校サッカーは常に負けたら終わりというなか、厳しい予選を勝ち抜いて全国から代表が集まる大会です。その分、実業団の試合にはない本気具合が伝わってくるし、観客の応援団席は自分の学校の生徒が闘っているので非常に熱のこもった応援になります。その高校サッカーで皆があこがれ目標とするピッチが準決勝、決勝の行われる聖地「国立競技場」です。サッカーをしていた人なら誰もがあこがれる場所であり、高校サッカーだけでなく、天皇杯、トヨタカップ、代表戦など、数々の感動と名シーンを観てきました。自分の中では、この国立競技場で行われた1986年のメキシコワールドカップ最終予選、対韓国との試合で木村和司の決めた30mのフリーキックやトヨタカップ決勝でユベントスのプラティニの決めた幻のゴールは今でも脳裏に焼き付いています。

自分の記憶にあるのは1964年の東京オリンピックが終わって20年以上経った国立競技場での思い出ですが、当時オリンピックを目の当たりにした人達の感動や興奮はこれ以上だったのではないかと思います。そんな場所が50年という年月で取り壊されてしまうのが非常に残念であり、今の国立競技場を継承しつつ増改築という形で生まれ変わる事を心のどこかで願っていました。確かに今回計画されているザハの設計した新国立競技場は斬新であり、選考の上でも有利であったことは考えられますが、なかで行われる選手と観客の熱気を包む空間より、外側に意識が向いているように思えてしまい、あの場所に本当にこんなスケール感のものを莫大な費用をかけてつくるべきものなのか?終わったあと人々に利用され親しまれる場所となるのかなど、いろいろな不安が出て来ます。2002年のワールドカップで建設された横浜国際総合競技場もワールドカップ後は運営に問題を抱えているようですし、北京オリンピックの際に建設された「鳥の巣」もヘルツォーク&ド・ムーロンの設計で話題を集めましたし建設前のイメージを観て興奮もしましたが、実際現地に行ってみた感想は、遠くから観る分には良いけど、近づくにつれてそのフレームの大きさやスケール感に圧倒されてしまい、イメージで観た柔らかそうなイメージはまったくありませんでした。

世界的に有名なスペインのサッカースタジアム「カンプノウ」は1957年に完成していますが、2度の修繕と拡張工事を経て約10万人収容のスタジアムとして世界中のサッカーファンのあこがれの地になっています。また、来年ワールドカップの行われるブラジル、リオデジャネイロにある「マラカナンスタジアム」は、1950年に行われたワールドカップの会場として決勝戦も行われたスタジアムで、2度の改修工事を経て来年のワールドカップで64年ぶりに2度目の決勝戦が行われる予定です。

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カウンプノウ
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マラカナンスタジアム

建築をやる人間としては新しい物を造ること否定的で良いのかと思われてしまいますが、高度経済成長期とは違いいろいろなものが整備された現状である意味日本的な手法で壊して造るというやり方でしか日本の良さをアピール出来なかった点が非常に残念です。日本の伝統工法には持続可能な建築の知恵がたくさんあり、そうした技術の発展が止まっているのかもしれませんが、今の日本の建設技術をもってすれば、国立競技場を建て替えるという発想ではなく、魅力的で機能的な場所にできるはずだと思います。

新しい国立競技場が、選手の熱気と観客の熱気が一体となり包まれる空間として長く愛されるスタジアムになる事を願います。